株式会社大山会計

小児科診療所の
経営のポイント

1. 経営環境について

経営環境について

小児科診療所の最も大きな経営環境は「少子化」です。合計特殊出生率も2014年 1.42と低水準で推移し、0歳~14歳の人口は低下傾向にあります。加えて栄養失調や不衛生に起因する疾病も減少し、全体的な受療率も低下しています。一方、アレルギーやぜんそく、アトピーなど現代社会にみられる疾病の受療率は上昇しています。
診療報酬は、プラス改定とマイナス改定があるものの、ほぼ横ばいで推移しており、小児科加算や地方自治体の助成金などもあり比較的優遇されています。
大病院の小児科医はハードであり希望者も減少しています。その影響もあり小児科診療所の開業数もさほど多くないのが現状です。

2. 経営戦略のポイント

競合度はさほど激しくならないと予想されますが、医療マーケットの減少に備えて戦略的な対応が望まれます。

その一つの考え方が、「専門性」を打ち出した診療所経営です。記述のアレルギーやアトピー、ぜんそくといった疾病の治療や予防を打ち出すのは有効な戦略です。
また、小児診療の特性から「病院との連携」により、安心できる医療体制・スキームを供給する一次窓口としての役割で特徴を打ち出すのも有効です。
一般的な「かかりつけ医」としての戦略を採択する場合には、その地域の「認知率」を高めることが重要になり、学校・幼稚園・保育園などとの提携戦略や、地域の父母への好ましい認知のための広報活動が望まれます。

3. マネジメントポイント

①増患対策について
増患のプロセスは、以下の通りです。
・認知:地域に住む子供を持つ父母に自院を認知していただく
・記憶:父母に自院を記憶していただく(子供が病気になった際に思い出していただく)
・試用:自院での診療の体験をしていただく
・使用:病気が発生したとき自院を継続的に選択していただく
・愛用:小児科なら自院が良いと口コミ・紹介をいただく
これらのうち、新規患者増加には「認知率向上「記憶率向上」が重要です。

古くからある「学校医・園医」という立場での提携戦略は地域の父母への認知を高めるという点で有効です。学校や幼稚園は既に小児科医が連携しているケースが多く、新規の提携は難しいかもしれませんが、新設の「保育園」などとの連携はまだ機会はあると思われます。

「予防接種」や「検診」は地域の父母の「認知率」と「記憶率」を高め、同時に診療所に来院するという「試用」の効果もあるので有効な政策です。但し他の来院患者との接触を避けるためにも、曜日や時間を指定して実施することが望ましいです。
好ましい認知を促進するには、「医療情報の提供」が有効です。地道で手間のかかる事ではありますが徐々に効果が出てくるはずです。小児固有の疾病の予防や治療、親として持っておくべき医療知識などを継続的に発信し続けることが効果的です。
媒体は、従来からある「院内広報」や「地域広報誌への寄稿」は有効です。またネット社会に対応したホームページ、ブログ、SNSなども極めて有効です。特にネット関連の媒体は父母が小児科を選ぶ際に参考にする確率が高まっているので活用されることをお勧めします。

②コストについて
小児科診療所の最も大きなコストは「人件費」です。
優秀なナースが必要であるのは間違いありませんが、すべてを正社員で構成すると人件費負担が大きくなってしまいます。できれば、優秀なナースを一人確保し、その指導のもとアルバイトでも回るオペレーションの仕組みを作って定着させることが望ましいといえます。