株式会社大山会計

整形外科診療所の
経営のポイント

1. 経営環境について

経営環境について

整形外科は、骨、関節、脊髄神経に関する筋骨格系の疾患を治療しますが、近年、手術件数は減少し、機能回復を目的とする処置や理学療法、リハビリテーションが治療の中心になりつつあります。リハビリテーションや消炎鎮痛処置のために再診患者割合が高くなりますが、診療報酬点数は一般外科よりも低くなります。牽引や器具等の配置や処置のために広いスペースが必要になり、医療スタッフも他の診療科よりも多く配置する必要があります。また、整形外科は患者数が経営に直結する診療科なので、増患のためにはバリアフリーの待合室、広い駐車場スペースも必要となり、診療に必要な医療機器と共に初期投資は多額になります。

診療所数は2008年 12,929施設、2011年 12,252施設、2014年 12,792施設と微増微減で推移していますが、競合となる「柔道整復の施術所」は2008年 43,946施設、2010年 50,428施設、2012年 58,573施設、2014年 63,873施設と顕著な伸びを示しています。(厚生労働省発表 各年10月1日時点)この傾向は今後も続くと考えられますので、リハビリテーションの充実などで整骨院との差別化を図っていく必要があります。さらに通所リハビリテーションを選択される患者様もおられます。1回20分程度のクリニックのリハビリテーションよりも、数時間しっかりしたリハビリテーションができ、高齢者同士のコミュニティを築きやすい通所リハビリテーションが選ばれるケースも少なくありません。診療圏に高齢者が多い地域の整形外科は通所リハビリテーションが競合となる場合があります。

今後は高齢化の進展に伴い、診療需要は増加基調で推移すると考えられます。筋骨格系の疾病は加齢により増加しますが、特に60歳を超えてから患者受療率は急増します。診療報酬点数は低下傾向にありますので、診療単価を上げるには限界があるため、いかに多くの患者様を集患できるかが成功の鍵となります。

2. 経営戦略のポイント

整形外科で差別化する一番のポイントはリハビリテーションです。整形外科は、リハビリテーションのため再診回数が多く、一人あたりの受診日数が多い傾向にあります。約半数の患者様はリハビリテーションのみの患者様ですから、リハビリテーションをいかに充実させるかが、経営戦略のポイントになります。理学療法士を採用し「運動器リハビリテーション料(II)施設基準」を算定できれば平均診療単価が約400円増加します。施設基準を満たす要件は諸々ありますが、理学療法士を採用することで、リハビリ患者の満足度がアップし、患者数の増加につながると考えられます。

また、他院との差別化という点から、学校の多い地域では学生をターゲットにして、スポーツ外来を前面に打ち出す戦略も考えられます。また、「ペインクリニック(痛み外来)」を併設して、治療の奥行きを深めることも1つの方法です。

介護福祉施設やケアハウスとの連携も重要な戦略です。入所者の中には慢性疼痛を抱える方も多いので、訪問リハビリテーションを実施し、これら施設との連携を取ることが増患対策となります。

3. マネジメントポイント

整形外科の場合、他の診療科目と比較して初期投資金額が多額になります。広い診療所面積を必要とし、X線装置とX線室のシールド工事も行わなければなりません。また、看護師・放射線技師・理学療法士・リハビリ助手・医療事務と多くのスタッフを雇用します。治療に必要な医療機器は多種にわたり、電子カルテとリハビリ指示書等と連動させるネットワークシステムも必要になります。明確な経営ビジョンを持ち、戦略にともなった事業計画の立案が不可欠です。

患者様に来院いただくためには、診療所の存在や特徴を知っていただくことが必要です。 より広く多くの方に知っていただくために、ホームページや看板、パンフレットなどの宣伝広告が必要ですが、①患者が来ている・いない地域 ②来院動機 ③患者アンケート(満足度・不満足度)など、日々の患者データから情報を抽出し、効果の高い宣伝広告を行います。ホームページに自院の特徴(理学療法士によるリハビリテーション・スポーツ外来・ペインクリニックなど)を打ち出し、インターネットでのSEO対策も行います。

患者様は高齢の方が圧倒的に多いので、高齢者の方の立場に立った患者接遇は患者満足度を上げる意味においても重要です。穏やかに、丁寧に、聞き取りやすい声で話しかけるなど、心遣いを忘れずに接したいものです。こうした観点からの医療スタッフの教育・研修が顧客満足度の向上につながります。